発達障害の子どもの自立支援のために、子どもの特性や成長にあわせた「療育」でサポートしていくことも大切です。
「子供の発達障害の治療方法を紹介!療育に特化した支援とは」でさまざまな療育を紹介しましたが、今回はその中の一つ、「感覚統合療法」についてご紹介します。
原因があまり解明されていない発達障害ですが、感覚と脳の働きがうまく連携せず、スムーズな情報伝達が行われていないと言われています。
この記事では、感覚の偏りを整える療育方法である感覚統合療法の特徴や具体的な取り組みを解説していきます。
感覚統合療法の概要
「感覚統合療法」とは、1960年にアメリカのエアーズ博士が発達障害の特性を持つ人のために提唱した、遊びを通じて行うリハビリテーション技術です。
特に自閉症スペクトラム症を抱える子どものなかには、感覚統合がうまくできず、体の動かし方がわからないなど、行動や感情を決めることに難しさを感じる場合があります。
感覚統合療法では、様々な日常の場面を工夫し遊びを通して、感覚統合のバランスを整え、偏りを和らげていきます。
感覚の種類や感度は十人十色で、子どもの状態に合ったサポートが大切です。家庭で行うことができる方法もありますのでぜひ、専門機関のアドバイスをもらいつつ試してみて下さい。
日本感覚統合学会では、感覚統合の詳細や講習会などが紹介されています。詳しくは、日本感覚統合学会 公式サイトをご覧下さい。
ここまで、感覚統合療法についての概要を解説しましたが、そもそも「感覚統合」とはどの様なものなのでしょうか。次の項目でもう少し詳しく解説していきたいと思います。
「感覚統合」とは複数の感覚を整理・分類する脳機能のこと
感覚統合とは、複数の感覚を整理・分類する脳の機能のことです。
音や光など、私たちは常に様々な刺激に囲まれながら生活をしています。それらの様々な刺激が身体に加わり、感じ取るはたらきを「感覚」といいます。
感覚には、一般的に知られている五感(味覚・聴覚・視覚・嗅覚・触覚)と合わせて、筋肉や関節の伸縮、身体の状態を感じ取る固有覚(固有受容覚)と、身体の平衡感覚やスピードを感じ取る前庭覚があります。
この3つの感覚(五感・固有覚・前庭覚)は、日常生活の中でも絶えず様々な感覚器官から情報を得ており、私たちの脳は得た情報をきちんと分類したり整理することで、情報の
渋滞を防いでいます。このはたらきを「統合」と呼んでいます。
感覚統合は、この「感覚」と「統合」のはたらきによって、その場その時に応じた感覚の調整や注意の向け方ができるようになり、自分の身体の状況を把握する能力、道具を使いこなす能力、人とのコミュニケーションを取る能力に繋がっています。
しかし、発達障害の子どもはこの感覚統合がうまく行われていないことが分かっており、体を思い通りに動かせなかったり、騒音や光が気になってしまい落ち着けない、痛みに気づきにくいといった問題が生じてきてしまいます。
その他にも、感覚統合がうまく行われていないことで生じる生活への影響は様々にあります。次の項目で詳しく紹介していきたいと思います。
感覚統合がうまく行われないとで生じる生活への影響
感覚統合がうまく行われないことで生じる生活への影響を、感覚面、情緒面、動作面、言語面、対人面、心理面に分けて解説していきます。
また、感覚統合がうまく行われていないことで現れる傾向や特徴も合わせて紹介しているので、お子様が当てはまっているかどうかチェックしながら読んでみて下さい。
【感覚面】感覚が過敏・鈍麻になる
感覚統合がうまく行われない子どもは、感覚面では感覚過敏や感覚鈍麻であることが多いです。
「感覚過敏」とは、特定の刺激(音や光、匂いなど)に対して過剰に反応してしまう状態を指し、逆に「感覚鈍麻」は感覚刺激に対しての反応が鈍い状態のことです。
感覚刺激を上手にコントロールできない子どもは、それが原因でストレスが溜まりやすかったり、自らを傷つけてしまうことで苦しい思いをしてしまう場合が考えられます。
- ドライヤーや鳴き声など特定の音を嫌がる
- 触られるのを嫌がる
- ブランコなどの不安定な乗り物が苦手
- 自分で頭を叩く
【情緒面】感情のコントロールが難しい
情緒面では、行動や感情の切り替えが難しく、衝動的に動いてしまうといった傾向が見られます。
感情の切り返しが難しいため、すぐに怒ってしまったり、衝動的に動いてしまうことで順番を待つことができないといった影響も見られます。
- 順番が待てない
- すぐに怒ってしまう
- 感情の切り替えができない
- 集中ができない
【動作面】不器用になりやすい
動作面では、指先を使った作業や身体を大きく使った運動が苦手な傾向にある子どもが多いです。
情緒面ともリンクする部分があり、集中力が続かないため、ずっと座っていることが難しかったり、ソワソワしてしまうといった行動も見受けられます。
- 跳び箱、縄跳び、ボール投げなどが苦手
- 靴紐を結ぶ、お箸を使うのが苦手
- じっとしていられない、すぐにソワソワしてしまう
【言語面】言葉が遅れやすい
言語面では、言葉にして上手に伝えることが難しい傾向が見られます。
伝えたいことがあっても上手く言葉に出せないことで、言葉にして相手に伝えることに苦手意識を抱いてしまう場合があります。
- 言葉が出ない
- 話しかけても振り向かない
- 助詞を間違えてしまう
【対人面】他人に合わせて行動することが難しい
対人面は、情緒面と言語面からの影響が大きく、順番を守ることができないために友達と仲良く遊べなかったり、気持ちを上手く言葉にして伝えることができないため、円滑なコミュニケーションを取るのが難しいと感じてしまう傾向があります。
- 友達と仲良く遊べない
- 集団行動が苦手
- ルールが理解できない
【心理面・二次的問題】消極的になりやすい
心理面では、ここまで紹介してきた生活への影響から、自分に自信を持てなくなってしまったり、逆にあらゆることに投げやりになってしまう場合があります。
「怠けているからできない」「甘えている」など感覚統合に理解の無い言葉をかけられて育った子どもは、自尊心や自己肯定感が低くなってしまうといった、「二次的問題」も
生じてしまう可能性があります。
- 消極的になってしまう
- 自尊心・自己肯定感が低くなってしまう
- あらゆることに投げやりになってしまう
これらの感覚統合がうまく行えていない子どもの特徴に当てはまるものが多かった場合は、できるだけ早く専門機関で受診することをおすすめします。そうすることで、二次的問題を防いでいく適切なサポートをしていきましょう。
感覚統合療法の具体的な方法
ここからは、専門機関を受診した際に取り組んでいく感覚統合療法の具体的な取り組みの内容や方法をご紹介していきたいと思います。
子どもの「楽しい」を尊重した取り組み
感覚統合療法で第一に大切なのは、子どもが「やりたい」「楽しい」と思うことです。子どもが興味があることや好きなことに寄り添いながら、自主的に参加できるような遊びや運動を提案していきます。
また、子ども一人ひとりに合わせた「ほどよいチャレンジ」をさせることで成功体験を積み重ねるためのサポートをしていきます。
感覚統合療法の方法
感覚統合療法は、前庭覚、触覚、固有覚を養っていくために効果的な遊びや運動などを行います。具体的な方法の例をご紹介します。
前庭覚を刺激する取り組み
- ブランコ
- シーソー
- 滑り台
- ハンモック
- バランスボール
- トランポリン
触覚を刺激する取り組み
- 砂遊び
- ボールプール
- 粘土遊び
- スライム遊び
- 袋の中身を当てるゲーム
- 背中に書かれた文字を当てるゲーム
固有覚を刺激する取り組み
- ジャングルジム
- うんてい
- なわばしご
- 雑巾しぼり
- バケツを持つ
これらの取り組みは、普段の遊びや運動、お手伝いなどに取り入れていくことができるものもありますので、ぜひ生活の中にも取り入れてみて下さい。
発達障害を抱える子どもには「ビジョントレーニング」もおすすめ!
千里堂網走では、発達障害やその傾向がある子どもの、苦手やできないことの改善に効果が期待できる「ビジョントレーニング」を実施しています。
できない原因は本人はもちろん、周りからもわかりづらいものですが、実は「視覚機能」と関係が深いとされています。
「見る力」を高めるビジョントレーニングは、学習能力や注意力・コミュニケーション力の向上が期待でき、お子様の苦手を改善し、やる気や自信を引き出すことにつながるトレーニングです。
以下の記事では、発達障害を抱える子どもに向けたビジョントレーニングについて詳しく紹介しています。ぜひ併せてご覧ください。
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