最近はお陰様で、各教育方面からビジョントレーニングの講演依頼をして頂く機会が増えてまいりました。厚く御礼申し上げます。社員一同、今後もお客様の健康増進と地域貢献のために努力してまいります。
今回はビジョントレーニングに関する様々な文献について言及するとともに、ビジョントレーニングの実際的な効果について概説していきます。この記事を通じて、ビジョントレーニングのさらなる可能性を感じて頂けたらと思います。
発達障害向けビジョントレーニングに関する研究まとめ
発達障害を抱える方に効果があったビジョントレーニングの研究文献を紹介します。
①学習障害(LD)傾向児童の自己肯定感も高めるビジョントレーニング
研究概要
学習の理解や定着が困難な小学3年生の女子児童に週1時間、
- ビジョントレーニングなどの有効な手立てを考え、個別指導計画に明らかにすること
- 個別の指導計画に基づき、通級による指導時に手立てを実施すること
- 本人・保護者・学級担任によるPDCAサイクルの定期的な評価を実施し、改善に取り組むこと
を実践したこの研究では読み書きの困難さの改善に取り組むことで、自己肯定感を高める狙いがある。
研究結果
- ビジョントレーニングを実施することで、眼球運動が円滑にできるようになった。
- 視覚機能が高まり形状を正確に捉えられるようになったことで、 漢字やカタカナが正しく習得でき、字形も整ってきた。
- 視覚的認知能力が高まると、読み書きの困難さを軽減する効果を期待できる
- 学習内容を理解できると自分自身で実感でき、苦手な内容を克服したいと前向きに取り組む姿勢が顕著に表れるようになった。
- 以前には「自分はばかだ」と思い込んでいた原因を視覚機能の問題だったと自己理解することで、学習に自信をもって取り組み、集中力を発揮できるようになった、という女子児童の自己肯定感が向上した姿を検証することができた。
文献URL:
学習障害児への認知プロフィール分析を活かした読み書き指導とビジョントレーニングの効果
②ポジティブな循環を生み出す。読み書き不全を訴える小中学生へのビジョントレーニング効果
研究概要
読み書き不全を訴える「ことば」の教室に通う児童9名それぞれに必要なビジョントレーニングを週1〜2回を約2〜3ヶ月行い、効果があるかどうかについて、
①DEM(Developmental Eye Movement Test)
数字を読むためのプレテスト、等間隔に配列された数字を垂直(縦)に読んでいくTestAとTestB、および不等間隔に配置された数字を水平(横)に読んでいくTestCとで構成されており、眼球運動機能の定量評価実施のための手法
②VMI(Developmental Test of Visual-Motor integration)
「目と手の協応」の能力やそれに伴う視覚的な認知力の現状を評価するための手法
③見る力のチェックリスト
の3つから測定した。
研究結果
- 測定の結果、ビジョントレーニングの成果を表す結果を出すことができた。
- 読み書き不全を訴えていた子供たちでも、ビジョントレーニングを通して「速く」「正確に」読み取るという能力をアップさせることができた。
- 「ことば」の教室や通級で行う利点として、友だち同士に張り合いがでたり、児童生徒がやりたいことができた
- 学校内の児童生徒の動きを見た教員の意見をすぐに個別指導計画を取り入れることができるため、苦手なことへの対応が学校内でできるようになる。これは子どもの達成動機を高めることにつながると考えられ、こうしたポジティブな循環システムを迅速に行えることが学校内でビジョントレーニングを行う最も大きな利点と考えられる。
文献URL:
発達障害傾向のある小中学生へのビジョントレーニングの効果
③学習障害児が意欲的に取り組みたくなる!認知プロフィール分析を活かした読み書き指導とビジョントレーニングの効果
研究概要
学習障害児(読み書き障害)である小学2年生に対し、読み書き指導を通じて平仮名やカタカナのフラッシュカードや、具体物の操作を通した活動を導入した。
さらに、目の動きをスムーズにさせるためにビジョン(視機能) トレーニング(「追従性眼球運動トレーニング」「跳躍性眼球運動トレーニング」 「両眼のチームワークのトレーニング「ボディイメージのトレーニング」 の4種類)を組み合わせたものを約7ヶ月間1指導90分を20回実施した。
研究成果
- 平仮名、カタカナ、漢字の音読や書き取りにおいて飛躍的に改善した。
- ビジョントレーニングの成果としては、文章を読む際に頭や体を大きく動かすことなく目だけで文字を追えるようになったり、似たような文字を区別することができるようになった。これらの成果により、音読の速度を上げることができた。
- また、ビジョントレーニングはゲーム感覚で行うことができるものが多いため、対象児が意欲的に取り組めたということも効果を後押ししたと考えられる。
文献URL:
学習障害児への認知プロフィール分析を活かした読み書き指導とビジョントレーニングの効果
スポーツビジョントレーニングに関する研究まとめ
スポーツのパフォーマンス向上や、体を動かすことで視力の向上に繋がるといった研究文献を紹介します。
①メジャーリーガーも取り入れていたスポーツビジョントレーニング
論文概要
「動くものを見る」、「広い範囲を見る」、「瞬間的に見る」これらを総称してスポーツビジョンと呼んでいる。
具体的には4つの側面(測定・評価、矯正、トレーニング、保護)から貢献するコンセプトである。競技力を向上させたいスポーツ選手や指導者の期待に応えるために、スポーツの現場では測定・評価とトレーニングが中心である。
スポーツ選手の見る能力を測定・評価し、さらに強化するコンセプトは視能訓練士の眼やトレーニングの領域と大きく異なる。
また、この文献では強化の方法や、スポーツ選手の視力についても述べられている。
研究結果
スポーツビジョンでの強化(トレーニング)方法
単に「見る能力」だけをトレーニングするのではなく、「見る能力」と「そのスポーツ特有のスキル」とリンクしてトレーニングすることでスキルアップをはかることが必要である。
「見方」「使い方」をトレーニングするという考えである。
トレーニング例 野球
野球(含むソフトボール)は見る能力がパフォーマンスに関係する。
バッティングのときボールをいかにベース近くまで追跡できるかがバッティング力に関係している。
それを鍛えるのが、トスバッティングの時に0〜9が書かれた「ボールを打ち分けるトレーニング」だ。
奇数なら打ち、偶数なら打たないといったように数字を見分けることによりバッティングの瞬間までボールを見ることを狙いとしたものである。
アメリカ大リーグのマリナーズで活躍し2001年まで7年間にわたり首位打者となった、エドガー・マルチネス選手もこのようなトレーニングを取り入れていた。
彼の活躍の背景にはこのようなトレーニングがあったことが推測される。
文献URL:
スポーツビジョンの紹介
②ビジョントレーニング・身体活動による視力向上効果を有する学校体育の有効活用
研究概要
大人には「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」という労働衛生管理を促すガイドラインが定められているが、現状子供には無策である。
ガイドラインでは具体的に、「就業の前後又は就業中に、 体操・ストレッチ・リラクゼーション・軽い運動等を行うことが望ましい」と推奨している。
このような対策は、学校教育の体育の授業で取り入れられるものではないかと考え、この研究では「体育の授業における視力向上効果」を大学生を対象にして検証した。
研究結果
- 体育の授業の内容によって視力の向上効果を確認することができた。
- 体育の授業では人やボールを追って、「遠くを見た、近くを見たり」「上を見たり、下を見たり」することにより、期せずして毛様体筋と眼筋のトレーニングを行っており、「視力向上効果がある」ことが示唆された。
- 教育現場で可能な対策として、視力低下予防のために、 IT機器を使っ た授業後には体育の授業を設ける等の方策が望まれる。
文献URL:
学校におけるビジョントレーニングの実践と可能性 -発達支援とスポーツビジョントレーニング-
③フリースローで検証したスポーツビジョンの特性と応用性
研究概要
- 実験①ビジョントレーニングの効果を測定
健常な大学院生および大学生16名を対象とし、「トレーニング群」に週3回の頻度で2ヶ月間継続してビジョントレーニングを実施し、スポーツビジョンの変動要因やトレーニング効果および特性について検証した。
- 実験②ビジョントレーニングがフリースローに及ぼす景況を測定
実験1と同時期に同一の被検者を対象とし、2投を1セットとしたフリースロー15セットによる全30投の試技を、週3回の頻度で2ヶ月間継続して実施(コントロール群)し、ビジョントレーニングがフリースローの成否に及ぼす影響について検証した。
研究結果
実験① | 「トレーニング群」と「コントロール群」との比較では、測定期間中にビジョントレーニングを行った 「トレーニング群」が有意に高値を示した。 |
実験② | 全体として、特に未経験者にビジョントレーニングの効果を見ることができた。ビジョントレーニングによって、前後方向および左右方向へのシュートのずれを減少できる可能性が示唆された。 |
「トレーニング群」と「コントロール群」のバスケットボール競技の未経験者の比較では、測定期間中にビジョントレーニングを行った 「トレーニング群」の方が有意に高値を示した。
これらのことから、3次元映像を用いた機器に拠るビジョントレーニングは、スポーツビジョンを向上させ、競技レベルの未熟な段階において、競技力向上への有用性が示唆された。
文献URL:
スポーツビジョンの特性と応用性
④大学女子バレーボール選手におけるビジョントレーニングの効果について
研究概要
ビジョントレーニングを実施した選手の心理的内面にどのような変化が起こったのかを検討し、合わせてビジョントレーニングがバレーボールのパフォーマンス向土にどのような影響を与えるかという目的で、愛知教育大学女子バレーボール選手4名を被験者とし、約2ヵ月のトレーニングを行なった。
具体的には、対人パス中に相手の出した指の数をコールしたり、数字が書かれているボールをコールしながらサーブするといったようなトレーニングを取り入れた。
研究結果
- ビジョントレーニング前と後の視機能変化において、KVA動体視力(前後方向の動きを識別する能力)、DVA動体視力(横方向の動きを識別する能力)については改善がみられた。
- トレーニング期間中の試合での 1)スパイク決定率 2)ブロック成功率 3)サーブレシーブ返球率 4)スパイクレシーブ返球率などのパフォーマンスについては、大きな変化はなかった。
- 内省報告においては、4名の被験者すべて、ビジョントレーニングがバレーボールに必要ということを認め、確実にプレーがプラスに変化してきたことを報告した。
どの被験者も、初めの頃は「見る」ということにあまり意識をしていなかったが、ビジョントレーニングを通して自身のプレーにプラスの影響を与えていることを実感することができたという。
文献URL:
スポーツビジョントレーニングの事例研究(2) ―大学女子バレーボール選手におけるビジョントレーニングの効果について―
まとめ
今回は、「文献からわかる発達障害向けのビジョントレーニングの効果」と「文献からわかるスポーツビジョントレーニングの効果」についてご紹介しました。
ビジョントレーニングが教育現場やスポーツ分野に取り入れられ、日々研究が行われているということがお分かり頂けたと思います。
読み書きが難しいと感じられているお子様や、スポーツに力を入れていきたいとお考えのお子様がいらっしゃいましたら、ぜひ一度千里堂網走本店にご相談下さい。
千里堂網走のビジョントレーニング
千里堂網走本店では、スポーツ向けビジョントレーニングに取り組んでいるほか、発達障害の子ども向けのビジョントレーニングも実施しています。
まずは、「見る力」を検査し、その人の目の状態から専門的な知識でトレーニング方法を指導します。
ビジョントレーニングは、単発的ではなく長期的に続けていくことが重要です。
お子様の成長とともに、認知発達も進んでいきます。その変化をしっかりと把握し、年齢や発達に合わせてトレーニング方法も変えていかなければ、良い効果は期待できません。
定期的な発達テストの結果と、成長に合わせた適切なトレーニングにより、お子様を長きに渡りサポートいたします。
ご相談からでも承っておりますので、「もっと詳しく聞いてみたい」とお考えの方はぜひこちらからお問合せ下さい。
お問合せはこちら他にもビジョントレーニングがどのような分野で取り入れられているかについて、以下の記事で解説しています。併せてご覧ください。