発達障害のひとつであるADHDは、「落ち着きがない」、「じっとしていられない」、「注意力がない」といった特徴があります。
結果として勉強や学校生活で困難を抱えてしまう子供は多く、彼らにとって適切な環境をどのように整えていくかは現代社会の大きな課題です。
ADHDの子供に対するスムーズな環境整備やケアのために、「目の動き」に着目した研究結果を紹介します。
ADHDの子供の目の動きには、ある特徴があった!
大阪大学の研究チームが、アメリカの科学誌「PLOS ONE」オンライン版において、ADHDの子供の目の動きについての発見を発表したのは、2015年のことです。
実験は、5歳から11歳までのADHDの子供37人に対して行われました。モニター上で点を次々と表示させ、その点を目で追う反応時間を計測するという内容です。
一般の子供と比較すると、ADHDの子供の方は反応速度が遅いという結果が出ています。また、点の表示を変える際に一瞬だけ黒い画面を差し込んだところ、一般の子供は反応時間が短くなり、ADHDの子供はほぼ変化がなかったそうです。
このことから、ADHDの子供は、目を素早く動かすサッカード眼球運動を制御する脳機能に異常があることが明らかになりました。
つまり、ADHDの子供は点を集中してみることが苦手であり、目の動きが遅いのです。
もっとスピーディーかつ適切なADHDケアを目指して
現在、ADHDをはじめとする発達障害には明確な診断基準がなく、判断が難しいとされています。子供への質問や行動から判断するしかなく、数値などの客観的な判断基準が確立していないからです。
発達障害の特徴は個人差が大きく、子供の生活環境に左右されることも、判断が困難である理由のひとつでしょう。
しかし、先ほど紹介した研究結果をもとに客観的な診断法が確立されれば、現在よりも早く適切なADHDケアを行うことができます。
例えば、トラブルになりがちなADHDの子供に対する心のケアや接し方をはじめ、伝わりやすい言葉選びなどを、周囲の大人が学ぶことが可能です。
また、発達障害の子供でも扱いやすい筆記用具や遊び道具、能力を発揮しやすく健やかに過ごせる環境を早期に用意することもできるでしょう。
ADHDであっても無理なく楽しくできる学習や、「見る力」を鍛えるビジョントレーニングを行うことで、症状が軽くなる可能性もあるのです。
ADHDへの理解を深めると同時に、「ADHDの子供は目の動きが遅い」という特徴を覚えておけば、このようなケアに役立てることもできるかもしれません。
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