発達障害の1つであるADHDは、「落ち着きがない」「じっとしていられない」「注意力がない」といった特徴があります。
ある研究ではADHDの子供と一般の子供と比較すると、ADHDの子供は目の反応速度が遅いという結果が出ています。
今回は、発達障害を抱える子供の目の動きの研究から、目の動きを鍛えるビジョントレーニングの方法をご紹介しています。
この記事を通して、発達障害をお持ちのお子様の目の動きを改善する1つの方法をお伝え出来たらと思います。
発達障害の目の動きの特徴
大阪大学の研究チームが、アメリカの科学誌「PLOS ONE」オンライン版において、ADHDの子供の目の動きについての発見を発表したのは、2015年のことです。
実験は、5歳から11歳までのADHDの子供37人に対して行われました。モニター上で点を次々と表示させ、その点を目で追う反応時間を計測するという内容です。
一般の子供と比較すると、ADHDの子供の方は反応速度が遅いという結果が出ています。また、点の表示を変える際に一瞬だけ黒い画面を差し込んだところ、一般の子供は反応時間が短くなり、ADHDの子供はほぼ変化がなかったそうです。
このことから、ADHDの子供は、目を素早く動かすサッカード眼球運動を制御する脳機能に異常があることが明らかになりました。
つまり、ADHDの子供は点を集中してみることが苦手であり、目の動きが遅いのです。
「見る力」と眼球運動の関係
眼球運動は、「見る力」の土台となる機能を果たします。
前述した様に発達障害を抱えるお子様は、この眼球運動を鍛えることで「見る力」の総合力を上げていくことができます。
「見る力」について、詳しく説明していきます。
「見る力」は3つに分けられる
「視力」と「見る力」は別のものであり、見る力は眼球運動、視空間認知、目と手の協応の3つから構成されています。
眼球運動 | ものを目で追う、視線を素早く動かす、両目を寄せたり話したりする力。脳に情報を「入力」する段階。例)ボールを目で追う |
視空間認知 | 目から入った情報を脳で処理する力。脳に入力された情報が処理される段階。例)ボールが落ちる位置を予測する |
目と手の協応 | 視覚と体の動きを連動させる力。処理した情報から動きを出力する段階。例)ボールをキャッチする動作 |
また、これらの3つの見る力は、ものを見る一連の仕組みと言えます。
例えば、キャチボールで向かって来るボールをキャッチするという一連の動作では、向かってくるボールを目で追う段階は「眼球運動」
ボールが到達する位置とタイミングを脳が認知する動作は「視空間認知」
目で追いながら手を動かしてキャッチする動作は「目と手の協応」
この様に、一連の動作をするにも3つの機能・能力は欠かせないものであり、眼球運動は「見る力」の土台となる機能だと言えます。
眼球運動が弱い人の特徴
眼球運動が弱い人には、以下の特徴があります。
- 黒板の字をノートに書き写すのが苦手
- 本を読む時に、行を読み飛ばしてしまう
- 漢字が覚えにくい
- 筆算で間違うことが多い
- キャッチボールが苦手
この様に、眼球運動が弱いことで、生活の中の些細なことでも難しく感じてしまうことがあります。
当てはまるものが多い場合には、1度医師や専門機関に相談してみることをおすすめします。また、ビジョントレーニングを通して「見る力」を向上させ、症状を改善させていきましょう。
「見る力」を療育するビジョントレーニングとは
眼球運動が弱いお子様にぜひおすすめさせて頂きたいのが、ビジョントレーニングです。このトレーニングに取り組むことで、「見る力」を療育し、改善していくことができます。
ビジョントレーニングとは、プロスポーツ選手がパフォーマンスの向上として練習に取り入れている他、発達障害児童の抱える困難を改善する目的で近年注目を集めているアメリカ発祥の訓練方法です。
ビジョントレーニングは、専用の機械を使った本格的なものから、ご自宅で簡単に取り組めるものまで様々にあります。
ご自宅で簡単に取り組めるビジョントレーニングを紹介します。
自宅でできるビジョントレーニングの方法
ご自宅でも取り組めるビジョントレーニングの方法を3つ紹介していきます。
準備するものが少なく、簡単に取り組める内容を紹介しているので、ぜひご自宅でも取り組んでみて下さいね。
①用意するのはスマホだけ!「動画を観るビジョントレーニング」
最初に紹介するのは、動画を観るだけで簡単にビジョントレーニングに取り組むことができる方法です。
おすすめ動画1:「おうちでトレーニング~ビジョントレーニング~」
1つ目の動画は、「おうちでトレーニング〜ビジョントレーニング〜」というYouTubeにアップされている動画です。
この動画は、日本体育大学桜花高等学校のチャンネルにアップされたビジョントレーニングの動画です。
線に沿って目線を動かしたり、1〜20までのランダムに散らばった数字を順に探すことで、追従性眼球運動や跳躍性眼球運動を鍛えることができます。
おすすめ動画2:「おうちで楽しくビジョントレーニング!」
2つ目に紹介するのは「おうちで楽しくビジョントレーニング!」というYouTubeにアップされている動画です。
この動画は、奈良県のジョイビジョン奈良というメガネ屋さんが製作したビジョントレーニング動画です。
画面の中に現れる女の子を音楽に合わせて見つけたり、ランダムに表示される数字の中から特定の数字を見つける内容となっています。
遊びながら楽しくトレーニングに取り組めるという点でおすすめです!ぜひ、親子で一緒に楽しみながら取り組んでみて下さいね。
下記のリンクでは、その他のビジョントレーニング動画を紹介しています。他の動画も見てみたい!という方はぜひご覧ください。
②眼球運動を鍛える「親指フォーカス」
引用画像:ビジョントレーニング基礎編 誰でも、どこでも、簡単にできるビジョントレーニングの方法
親指フォーカスは、用意するもの無く簡単にご自宅でも取り組めるビジョントレーニングです。
このトレーニングを通して目の筋肉を鍛えることで、スムーズな眼球運動ができる様になります。
方法名 | 親指フォーカス |
準備する物 | ー |
やり方 | ①腕を肩幅に開く②親指を立て、両手を前に伸ばす③(写真①)顔は動かさず、目だけで1秒で前後の親指を往復して見る(10往復行う)④(写真②)親指を上下に構え、同じ様に親指を往復して見る(10往復行う)⑤(写真③)親指を斜めに構え、同じ様に親指を往復して見る(10往復行う)⑥(写真④)親指を左右に構え、同じ様に親指を往復して見る(10往復行う) |
③周辺視力を鍛える「ナンバータッチ」
ナンバータッチは、ランダムに並べた数字をタッチし、そのタイムをはかるトレーニングです。
このトレーニングでは、眼球運動を初めとし、広い範囲のものを見る周辺視野を鍛えることが出来ます。今回は紙に書いて行う方法を紹介しますが、数字が書かれたマグネットを冷蔵庫などに貼り付けて行うこともできます。
また、タイムを測ってゲーム感覚で行うのもお子様の意欲をアップさせるための1つの方法でもあります。お子様のペースに合わせて取り入れてみて下さいね。
方法名 | ナンバータッチ |
準備する物 | ストップウォッチ、紙、ペン、テープ |
やり方 | ①1〜20までの数字を書いた紙を壁にランダムに貼る②スタート。タイム計測も行う③1〜20まで順番に両手を使って数字をタッチしていく |
下記の記事では、自宅で取り組めるビジョントレーニングを詳しく紹介しています。ぜひ他のトレーニングも試してみて下さい。
ビジョントレーニングを行う前の注意点
ビジョントレーニングを行う際には、以下の注意点があります。
- 目に病気がある場合は、事前に医師に相談する
- 視力の矯正が必要な場合は、矯正を行ってから取り組む
- 目の痛みや違和感がある場合は、医師に相談する
- トレーニング時間は長くとも1日15分程度にとどめる
- 本格的に実感を得たい場合には、専門知識のある機関に相談する
この様に、目に病気や違和感がある場合には、あらかじめ医師や専門機関に相談してから取り組みましょう。
千里堂網走は発達障害向けのお子様向けのビジョントレーニングを行っています
北海道網走市にあるメガネ屋千里堂網走本店は、発達障害の子ども向けのビジョントレーニングに取り組んでいる他、スポーツ向けビジョントレーニングも行っております。
ビジョントレーニングではまずは、「見る力」を検査し、その人の目の状態から専門的な知識でトレーニング方法を指導します。
ビジョントレーニングは、単発的ではなく長期的に続けていくことが重要です。
お子様の成長とともに、認知発達も進んでいきます。その変化をしっかりと把握し、年齢や発達に合わせてトレーニング方法も変えていかなければ、良い効果は期待できません。
定期的な発達テストの結果と、成長に合わせた適切なトレーニングにより、お子様を長きに渡りサポート致します。
ご相談からでも承っておりますので、「もっと詳しく聞いてみたい」とお考えの方はぜひこちらからお問合せ下さい。
他にも、ビジョントレーニングがどのような分野で取り入れられているかについて、以下の記事で解説しています。併せてご覧ください。
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