「見る力」を育むビジョントレーニングをご存じですか?
ビジョントレーニングは、スポーツの現場だけでなく、発達障害を抱える子どもにも効果的なトレーニングとして、今注目を浴びています。
本を読むのに行を飛ばしてしまう、漢字の習得がなかなか進まない…
そんなお悩みをお持ちのお子様がいらっしゃいましたら、ビジョントレーニングを行うことでその症状を軽減できる可能性があります。
この記事では、ビジョントレーニングを取り組むのにおすすめな人やビジョントレーニングの例を紹介しています。
この記事を読むことで、発達障害の症状改善のヒントにして頂ければと思います。
近年話題の「ビジョントレーニング」とは
ビジョントレーニングとは、両眼の動きを鍛えることで視覚機能はもちろん、学力や運動能力を向上させることができると、教育やスポーツの現場で注目を浴びているトレーニングです。
教育現場では、特に発達障害を抱える子どもの読み書きの能力を向上させたり、集中力を鍛えることができます。
スポーツの現場では、動体視力や周辺視野、瞬間視鍛えパフォーマンスの向上を目的としてアスリートのトレーニングによく取り入れられています。
ビジョントレーニングの発祥と歴史
ビジョントレーニングは80年以上も前から、アメリカ合衆国で提唱・開発されてきたトレーニング方法です。
近年、日本でも発達障害の子どもやスポーツの現場で注目を浴び、取り入れられる様になってきました。
また、ビジョントレーニングは「オプトメトリスト」と呼ばれる薬や手術を使わずに患者の視力を回復させる専門家が、眼科医とほぼ横並びの国家資格制度に基づき、北米や欧州を中心に多くの国々で広く導入されています。
ですが、日本ではまだ公的な資格制度がないのが現状です。
教育やスポーツの現場に取り入れられている例をご紹介
ビジョントレーニングが取り入れられている例を、発達障害教育とアスリート教育の2つの視点から紹介致します。
例①発達障害児教育:自己肯定感も高めた「ビジョントレーニング」
宮城教育大学が行った研究では、学習の定着や理解に困難な小学3年生の女子児童にビジョントレーニングを行ったところ、読み書きの困難さを軽減させたり、漢字などの文字も形をしっかりと認識できる様になったという効果が見られました。
また、以前には「自分はばかだ」と思い込んでいた原因を視覚機能の問題だったと理解することで、学習に自信をもって取り組み、集中力を発揮できるようになりました。
この様にして、ビジョントレーニングは目の力を鍛えるだけではなく、自己肯定感の向上にも繋げることができたと報告されています。
参考文献:学習障害児への認知プロフィール分析を活かした読み書き指導とビジョントレーニングの効果
例②アスリート教育:大リーグ首位打者が取り入れた「ビジョントレーニング」
アメリカ大リーグのマリナーズで活躍し、2001年まで7年間にわたり首位打者となった、エドガー・マルチネス選手もビジョントレーニングを取り入れたことで有名です。
トレーニング方法は、トスバッティングの時に0〜9が書かれた「ボールを打ち分けるトレーニング」です。
奇数なら打ち、偶数なら打たないといったように数字を見分けることによりバッティングの瞬間までボールを見ることを狙いとしたものです。
このトレーニングで、動体視力や瞬間視を鍛えたことで好成績を残せたのではないかと言われています。
参考文献:スポーツビジョンの紹介
この様にして、ビジョントレーニングは発達障害児教育やアスリート教育の現場で効力を発揮しています。
発達障害の療育にビジョントレーニングが効果的な理由
ビジョントレーニングはアスリート教育の現場では、動体視力や周辺視野、瞬間視の能力を高めるために使用され効果を発揮しています。
では、なぜ発達障害を抱える子どもにも効果があるのでしょうか。その理由を詳しく紹介していきます。
発達障害と目の動きには深い関係がある
発達障害の特徴は様々にありますが、ADHDの子どもの目の動きを調査した研究では、一般の子供と比較すると、ADHDの子どもの方は目の反応速度が遅いという研究結果が出ています。
この研究から、ADHDの子どもは、目を素早く動かすサッカード眼球運動を制御する脳機能に異常があるということが明らかになりました。
つまり、ADHDの子どもは点を集中してみることが苦手であり、目の動きが遅いのです。この研究から、発達障害と目の動きには深い関係があると言えます。
ビジョントレーニングの療育効果
ビジョントレーニングは、「視力」ではなく「見え方」を鍛えるトレーニングです。
「見え方」を鍛えるトレーニングとは、「物が見えてから情報を脳に伝達し、行動に移す」といった一連の動きをよりスムーズにするためのトレーニングです。
特に、眼球運動を初めとする目の動かし方や目の筋肉を鍛えるトレーニングに取り組むことで、発達障害の症状を軽減できる可能性があります。
こんな人にはビジョントレーニングが向いている
ビジョントレーニングが向いている人は、以下のような特徴がある人です。
- 黒板の字をノートに書き写すのが苦手
- 本を読む時に、行を読み飛ばしてしまう
- 漢字が覚えにくい
- 筆算で間違うことが多い
- キャッチボールが苦手
このような特徴をお持ちの方は、眼球運動が弱いことが原因の場合があります。ですので、1度医師や専門機関に相談してから、ビジョントレーニングに取り組むことをおすすめします。
自宅で出来るビジョントレーニングの方法
準備するものが少なく、ご自宅でも取り組むことができるビジョントレーニングの方法を簡単に、2つ紹介します。
トレーニング①:用意するのはスマホだけ!「動画を観るビジョントレーニング」
最初に紹介するのは、動画を観るだけでビジョントレーニングに取り組むことができる方法です。
用意するのはスマートフォンのみなので、手軽に取り組むことができるでしょう。ぜひ、日々の生活に取り入れてみて下さいね。
「おうちで楽しくビジョントレーニング!」
この動画は、奈良県のジョイビジョン奈良というメガネ屋さんが製作したビジョントレーニング動画です。
画面の中に現れる女の子を音楽に合わせて見つけたり、ランダムに表示される数字の中から特定の数字を見つける内容となっています。
遊びながらトレーニングに取り組めるという点でおすすめです!親子で一緒に楽しみながら取り組んでいきましょう。
トレーニング②:眼球運動を鍛える「親指フォーカス」
引用画像:ビジョントレーニング基礎編 誰でも、どこでも、簡単にできるビジョントレーニングの方法
親指フォーカスは用意するもの無く、簡単にご自宅でも取り組めるビジョントレーニングです。
このトレーニングでは、目の筋肉を鍛えることでスムーズな眼球運動ができる様になることを目指します。
方法名 | 親指フォーカス |
準備する物 | ー |
やり方 | ①腕を肩幅に開く②親指を立て、両手を前に伸ばす③(写真①)顔は動かさず、目だけで1秒で前後の親指を往復して見る(10往復行う)④(写真②)親指を上下に構え、同じ様に親指を往復して見る(10往復行う)⑤(写真③)親指を斜めに構え、同じ様に親指を往復して見る(10往復行う)⑥(写真④)親指を左右に構え、同じ様に親指を往復して見る(10往復行う) |
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千里堂網走は発達障害の子ども向けのビジョントレーニングのプロ集団です
北海道網走市にある千里堂網走本店では、スポーツ向けビジョントレーニングに取り組んでいるほか、発達障害の子ども向けのビジョントレーニングも実施しています。
まずは、「見る力」を検査し、その人の目の状態から専門的な知識でトレーニング方法を指導します。
ビジョントレーニングは、単発的ではなく長期的に続けていくことが重要です。
お子様の成長とともに、認知発達も進んでいきます。その変化をしっかりと把握し、年齢や発達に合わせてトレーニング方法も変えていかなければ、良い効果は期待できません。
定期的な発達テストの結果と、成長に合わせた適切なトレーニングにより、お子様を長きに渡りサポートいたします。
ご相談からでも承っておりますので、「もっと詳しく聞いてみたい」とお考えの方はぜひこちらからお問合せ下さい。
他にもビジョントレーニングがどのような分野で取り入れられているかについて、以下の記事で解説しています。併せてご覧ください。
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