視覚と脳は同時に発達するといわれています。
赤ちゃんの目はほとんど見えませんが、子どもの視力は3歳まで急速に成長し、6歳ごろには1.0に達します。
しかし、適切な刺激が与えられない場合、視覚と脳は正常に発達しません。子どもの弱視に気づけず、「弱視の見逃し」が起こってしまうと、少なからず子どもの脳の発達に影響を与えます。
実は弱視に気づけなかったという実例は、けっして珍しいことではないのです。では、どうして弱視の見逃しが起こってしまうのでしょうか?
この記事では、数多くの弱視用メガネを製作してきた千里堂網走本店のスタッフ増子が、自分の実体験(実は僕自身も弱視です)や現場経験をふまえつつ、
日本眼科医会の報告を参考にしながら、弱視の見逃しが起こってしまう理由や、子どもの弱視に気づいたときの対処方法について解説します。
弱視に気づかない主な理由6つ
日本眼科医会の指摘として、次の6つが挙げられます。
- 子どもは見えにくさを自覚できない
- 自治体によって検査の精度に差がある
- 「3歳児健診」の仕組みが不十分
- 視覚発達にはタイムリミットがあることを知らない
- 弱視について知識がない
- 子どもの落ち着きがないため、精密検査が難しいと判断した
以下で、それぞれについて詳しくみていきましょう。
①子どもは見えにくさを自覚できない
子供の弱視は、外見や行動には現れないことがあり、観察だけでは見つけにくく、問診や視力検査だけでは見逃されることがよくあります。
3歳1か月の子供に対するランドルト環を使用した視力検査の実施可能率は約78%と報告されています。
3歳5〜6か月になると、検査可能率は約95%に上がりますが、検査を正しく実施できていない場合もあります。そのため、家庭での視力検査だけに依存して視力異常を発見するのは難しいです。
②自治体によって検査の精度に差がある
3歳児健診において、視覚検査で弱視が見過ごされる子供が存在します。家庭での視力検査で「見えた」としても、その結果が正確であるとは限りません。
そのため、市区町村による健診で屈折検査を実施することが求められます。ただし、各市区町村における検査の内容や精度管理方法には差があり、検査の精度にもばらつきが見られます。
③「3歳児健診」の仕組みが不十分
1997年度から、3歳児健診での視覚検査は市区町村が担当し、最初の検査は家庭で行われます。保護者は、「ランドルト環」と呼ばれる、アルファベットの「C」の一部が欠けた図形を使用して子供の視力を評価し、アンケートに回答します。
どちらかの眼の視力が0.5未満の場合、保護者は市区町村の保健センターなどで行われる2次検査で保健師などによる再検査を受けます。
ただし、家庭での視力検査が十分に成功した場合、検査は原則としてそこで終了します。
保護者が必要性を理解しない場合、精密検査が必要であっても無視したり、治療に消極的な態度をとることがあります。
④視覚発達にはタイムリミットがあることを知らない
視覚の発達には時間的な制限があります。
脳の視覚に関する感受性は、生後3か月から1歳半ごろが最も高く、その後は徐々に低下し、6歳から8歳以降はほとんど反応しなくなります。
この感受性期間を過ぎてから治療を行っても、思うような効果を得ることは難しく、生涯にわたって弱視が残ることがほとんどです。弱視は小学校入学前に治療を完了させることが重要です。
3歳児健診で弱視を発見し、治療を継続できれば、ほとんどの子供は小学校入学までに眼鏡をかけての視力(矯正視力)が十分に成長します。
しかし、感受性期を過ぎてから視覚の発達が停止してしまうと、治療をしても視力の発達は見込めず、眼鏡をかけても十分な視力を得ることができません。感受性が高い時期に治療を開始することが重要です。
⑤弱視について知識がない
あらためて「弱視」とは、単なる近視や遠視とは異なる状態です。
弱視とは、生後から約6歳までの視覚の発達段階で、何らかの原因によって視力の発達が妨げられ、視力が完全に発達していない状態を指します。
この状態では、メガネやコンタクトレンズを使用しても、視力1.0の視標を見ることができません。このような弱視の子供は、50人に1人の割合で存在するとされています。
⑥子どもの落ち着きがないため、精密検査が難しいと判断した
日本眼科医会の調査によると、保護者に「なぜ速やかに精密検査を受けないのか」と訊ねたところ、「落ち着きがないため、精密検査は難しいと思い、検査ができるようになったら受診すればよいと思った」という回答がしばしばあったようです。
こうした判断もまた、さかのぼると「弱視に関する知識が乏しい」という問題に行き当たります。
弱視の精密検査で実際に行うこと
精密検査では、主に
- 問診・視診
- 固視検査・眼位検査・立体視検査・眼球運動検査
- 屈折検査・調節麻痺点眼下屈折検査
- 視力検査(遠見視力・近見視力)
- 細隙灯顕微鏡検査・眼底検査
などを行います。
具体的な弱視の治療
屈折異常弱視
主に強い遠視や乱視によって引き起こされます。この場合、適切なメガネを常に着用し、ピントの合った映像を脳に送ることが治療法となります。
不同視弱視
視力の高い目を決められた時間遮蔽し、視力の低い目のみを使うトレーニングが行われることがあります。
斜視弱視斜視
タイプや程度によって異なりますが、メガネの着用や斜視手術が行われることがあります。
形態覚遮断弱視
原因となる疾患の治療、例えば手術などが行われます。
弱視を見逃して6歳を過ぎてしまってもできることはあります
千里堂は、「近くを見るときの負担をやわらげるメガネ」を得意とする専門店です。
弱視用メガネも、この理念に基づき、弱視の目の負担をやわらげるように設計されています。
日本眼科医会が言うように、残念ながら、視力発達の感受性期と呼ばれる6歳頃までに治療を完了させなければ、視力を改善することは難しいのが現状です。
しかし、見えないように見えて、弱視の目は機能しています。そのため、正常なもう片方の目は、弱視の目のぶんまで働かなければならず、余計な負担がかかっています。
この負担をやわらげることで、正常な目の視力を守ることができます。千里堂の弱視用メガネは、弱視の目の負担をやわらげ、視力を守るために、一人ひとりに合わせた設計で提供しています。
千里堂は、これまでにたくさんの弱視用メガネを作製してきた実績があります。
スタッフの中には、小さい頃に弱視になった経験を持つ者もおり、弱視の方の気持ちに寄り添ったメガネづくりが可能です。
心配しすぎないことも大事!冷静に対処をしましょう。
弱視の発見が遅れたことを後悔するご両親も、けっして少なくありません。「どうして気づいてあげられなかったのだろう……」と悔やんでしまう気持ちは、とてもよくわかります。
でも心配しないでください!実は僕も弱視なのですが、日常生活に不自由を感じていません。
大切なのは、「お子さんが弱視になっても心配しすぎず前向きに捉えてほしい」ということです。
弱視だからといって、他の子どもより何かが劣るわけでもありません。事実、僕はとくに不自由することなく、元気に学生時代を送ることができました。
ただ、弱視は改善できるに越したことはないので、しっかり治療を完了してほしいと思います。
僕はこれまでたくさんの弱視の子どもと関わり、治療用のメガネをつくってきましたが、「子どもが嫌がって、かけてくれないんですよね~」と軽くみてしまう親御さんも少なくありません。
弱視治療は、とにかく1分1秒でもアイパッチやメガネをかけ続けることが大事です。
弱視用のメガネをお求めなら、ぜひ一度、千里堂網走本店にお越しください。北海道外からの来店も大歓迎です!
【アクセス】
女満別空港から車で約26分
【基本情報】
〒093-0014 北海道網走市南4条3丁目3
TEL : 0152-44-2233
MAIL : abashiri@senrido.co.jp
OPEN : 9:00 / CLOSE : 19:00
定休日:元旦のみ
測定予約は最終受付:17:00