スポーツビジョンというトレーニング方法があることをご存知でしょうか。名前は聞いたことがあったとしても、詳しいトレーニング内容までを知っている人は意外と少ないかもしれません。
今回の記事では、スポーツビジョンの概要や歴史、スポーツビジョントレーニングで鍛えられる能力などを詳しく解説します。さらに、スポーツビジョントレーニングの活用が向いている競技についても確認しておきましょう。
スポーツビジョンとは?
そもそもスポーツビジョンとは、スポーツに必要な視覚機能のことです。この視覚機能を鍛えることで、スポーツをするときの判断力や集中力、察知力などが向上すると言われています。
スポーツビジョンの歴史
スポーツビジョンは、1930年頃のアメリカで始まったと言われています。当時はスポーツビジョンという名前はまだなく、スポーツと視覚に関する研究というものでした。その後、1970年頃になり、スポーツと視覚の研究数が劇的に増加し、研究機関の設立が望まれるようになったのです。
そして、1978年にSports Vision Section(AOA-SVS)という機関が設立され、翌年にはスポーツ選手の視力機能の検査を開始します。1984年に開催されたロサンゼルス・オリンピックでは、ビジョン・ケア・センターを提供しました。同年に別の研究機関としてNational Academy of Sports Vision(NASV)が設立され、現在はInternational Academy of Sports Vision(IASV)という名称に変わっています。
一方、日本でのスポーツビジョンは1986年当時の株式会社東京メガネの社長・白山晰也氏が開催したスポーツビジョン講演が始まりとなっているようです。その後、白山氏は日本にスポーツビジョンセンターを開設します。
スポーツビジョントレーニングで鍛えられる能力
スポーツビジョントレーニングをすることで、どのような能力を鍛えることができるのでしょうか。ここでは、鍛えられる能力について詳しく解説します。
静止視力
静止視力は、スポーツを行う上で最も重要とされる能力です。視力検査をするときに行われるもので、静止した視標を使い、どのくらいまで小さな視標を見ることができるかをチェックします。
動体視力
動体視力とは、目の前で動いているものを見る能力です。大きく分けて2種類の視力に分類され、遠くから近づいてくるものを見極めるKVA動体視力と、上下左右に動くものを見極めるDVA動体視力があります。
深視力
深視力は、位置関係や距離感、奥行きなどを見極める能力です。左右それぞれの目で見る微妙な像のズレが立体感を生み出します。静止視力と相関関係にあるため、静止視力が低下すると、必然的に深視力も低下してしまう傾向にあるようです。
瞬間視
瞬間視とは、一瞬という短い時間の中で多くの情報を認知する能力です。常に変化する位置関係などを一瞬のうちに把握し、的確に動くためにも非常に重要な機能でもあります。
周辺視野
周辺視野は、見ているものの周辺の範囲を捉えるための能力です。広範囲を目で捉えられれば、周囲のものと自分の位置関係を把握するのに役立ちます。この視野を鍛えることで、正確に素早く状況を判断できるようになるでしょう。
コントラスト感度
コントラスト感度とは、色の濃淡などの微妙な色の差を見極めるための能力です。例えば、同じ色合いの白いセーターの上に、白い手袋を置いたとします。この場合、コントラスト感度が高いほうが見分けやすくなるという仕組みです。こちらも静止視力と相関関係にあるため、静止視力が低下すればコントラスト感度も低下すると言われています。
眼球運動
眼球運動は、動いているものに向ける視線を素早く動かす能力のことです。動いているものの動きに合わせて、あらゆる方向に視線を向け、それに追従することができるかが重要となります。
眼と手の協応動作
眼と手の協応動作とは、見たものを素早く、そして正確に判断する能力のことです。目で見た情報を脳に送り、脳でその情報に関する処理を行い、いち早く判断し、必要な動作を手足に出す動きのことを言います。
スポーツビジョントレーニングが向いている競技の例
静止視力や動体視力など、あらゆる視覚機能を鍛えてくれるスポーツビジョントレーニング。ここでは、このトレーニングがどのような競技に向いているのかをご紹介します。
卓球
卓球は遠くから近づいてきたり、上下左右に動くボールを見極める必要があるため、動体視力を鍛えておく必要があります。
また、目で捉えたボールをラケットで打ち返すために眼と身体の協応動作も高めておくのもおすすめです。
サッカー
サッカーは他の競技と比べて大きめのボールを使うスポーツであり、そこまでスピードが出るものでもありません。
静止視力や動体視力が良いことに越したことはありませんが、広範囲で競技をするものなので、周辺視野を鍛えておいたほうが良いでしょう。さらに仲間と協力してパスを繋ぐためにも、正確に距離を認識する深視力も備えておくべきです。
野球
野球の場合は、ポジションによって要求される視覚機能は異なりますが、全体的に高い視覚機能が必要です。
例えば、バッターの場合は自分で球を打つためにバットをスイングしなければなりません。一瞬というわずかな時間で判断するために深視力や瞬間視、眼と手の協応動作などを高めておくのがおすすめです。
ボクシング
ボクシングは比較的近い距離から相手にパンチを打ち込んだり、打ち込まれたりするスポーツです。そのため、一瞬で相手との距離を見極めなければならないため、瞬間視を身につけておく必要があります。
また、素早く動く相手を目で追うために眼球運動も備えておくと安心です。他にも、目で見た情報を処理し、すぐにパンチが出せるように眼と手の協応動作も高めておくべきでしょう。
テニス
テニスは広いコートを使って行う競技のため、ボールの位置やコートのラインを正確に把握するために深視力や周辺視野を身につけておく必要があります。
他にも、常に動くボールを目で追い続けるためにも、目を素早く動かすための眼球運動も大切です。正確なレシーブを決めるためにも、眼と手の協応動作も身につけておきましょう。
バスケットボール
バスケットボールの場合は、常に動き回る仲間や対戦相手の位置を把握しなければならないので、周辺視野を備えておく必要があります。
また、仲間にパスを回すためにすぐに状況を判断できる瞬間視を身につけておくのもおすすめです。さらにシュートをするためにゴールの正確な位置関係を把握する深視力を高めるようにしましょう。
バレーボール
バレーボールは相手側のコートに向かってボールを打ち合う競技です。動いているボールを目で捉え、パスを繋がなければならないため、瞬間視が非常に重要となります。
また、パスで繋いでもらったボールを相手側のコートに打つためには瞬時でボールの位置を捉え、手を動かす眼と手の協応動作も高めておくことが大切です。
さいごに:スポーツビジョントレーニングで視覚機能を鍛えてパフォーマンスを向上させよう
スポーツビジョントレーニングを取り入れることで、静止視力や動体視力、深視力などのあらゆる視覚機能を鍛えることができます。視覚機能が鍛えられることによって、スポーツパフォーマンスの向上や改善に役立つので、プレー中のミスの軽減にも役立つでしょう。
スポーツによって、鍛えるべき能力にも微妙な違いがあるので、自分の行うスポーツに合わせて不足している能力を鍛えるのもおすすめです。
まだスポーツビジョントレーニングをできる施設は決して多くはありませんが、千里堂メガネ網走本店では、運動能力を最大限に引き出すためのスポーツビジョントレーニングを実施しています。
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